フィクションに関する所感

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キャプテン・アメリカ:トゥルース 読了

おぞましい現実。目を背けたくなる歴史。歴史とは過去である、現在じゃない。だが実際にそれは起こったことであり、現実であったことの証明でもある。このコミックはそれを如実に伝えてくれる。それもキャプテン・アメリカというヒーロー、アメリカという国を背負ったヒーローを通して、描かれる。キャプテン・アメリカスティーブ・ロジャースではないというのはMCUのドラマファルコン&ウィンター・ソルジャーを見たものならその意味は分かるだろう。キャプテン・アメリカというのは偶像であり、象徴の特性が強いヒーローなのだ。そのキャプテン・アメリカという称号が何を指すのか、それも同ドラマが語っていたが、本書ではそれが違う意味で語られる。キャプテン・アメリカというのは超人血清を打たれ強化された肉体を持つ兵士である、故に同血清の実験台として黒人のアメリカ人があてがわれ、ここに黒人の「キャプテン・アメリカ」が誕生する。そのキャプテン・アメリカスティーブ・ロジャースが知らぬところで活動し、役目を終える。だがここに奇妙な陰謀がある。キャプテン・アメリカそれは、ナチスの秘密組織ヒドラに対抗する為アメリカという国家が必要としたヒーローだ。ではアメリカはなぜナチスを許せなかったのか、それは非人道的な人種差別的政策を合法的に行っていたからである。そのためにスティーブ・ロジャースは立ち上がった。はずだった……。矛盾に気づいたものもいるだろう、そう"アメリカが人種差別的なナチスに対抗した存在として生み出されたキャプテン・アメリカなのに、その陰で黒人を人体実験とした政策が行われ、その実験の成果としてスティーブ・ロジャースの白人のキャプテン・アメリカは生まれたのだ”。ユダヤ人虐殺という優生学的思考に立ち向かった正義の国アメリカなのに、その当のアメリカが黒人に対して非人道的人種差別的政策を行っていたのだ。事実本書で初めて知ったのだが、大戦前夜アメリカとドイツ(ナチスではない)は人種差別的、優生学的思考において、同調しており、アメリカの黒人に対する人種差別政策をドイツは先進的として見ていたのだ。悪のナチス、正義のアメリカ、そう単純な構図では、現実には無かったことがうかがえる。無論ナチスの罪がそれで許されるべきではない。だが人の命は決して軽くない。犠牲者の数が少なかろうと、ユダヤ人でなく黒人だろうと、やっていたことが変わらなければ、同じく裁かれるべきではなかろうか?本書を読んだ自分はこんな感想を抱いた。いや自分で書いて思ったのだが、これは最早ヒーローコミックの感想ではないな。だがアメコミの多様性を象徴するという意味でこれ以上の作品はないとも言える。あとスティーブ・ロジャースの名誉の為に言っておくと、全てを知ったスティーブ・ロジャースの行動は、非常に誇り高く、黒人のキャプテン・アメリカ(イザイア・ブラッドレー)の名誉を讃えようとする行動だったことは、彼が精神的にヒーロー足る人物であることを示している。ただスティーブ・ロジャースは冷凍されていた為、現代に蘇った彼に出来ることは少ないのだが。それでもイザイアの名誉の為に出来る行動を彼はしたと思う。